私が精神科医になった経緯をお話しいたします。
研修医のとき、入院を経験しました。自身が働く病院で患者となったのです。命の危険があると言われ、腰の手術を急遽受けることになりました。手術が終わった後、十分な説明はなく、漫然と薬を投与され、寝かされるだけの毎日でした。自分がどのような状態なのか、なぜ薬が使われているのか、いつまでこの状態が続くのか、何も教えてもらえず、焦りや不安が強まり、担当医に対する疑念も深まっていきました。そのまま2週間以上が過ぎ、担当医に強く抗議し、検査結果の開示や他の医師の診察を求める事態になったのです。そこから治療方針は見直され、徐々に回復し退院することができました。しかし、心の状態が思わしくないこともあってか、本来の経過よりも回復は格段に遅いものでした。もしもきちんと寄り添ってもらえたならば、もっと早く元気になれたのではないかと今でも思っています。
この経験から心のケアの大切さに気付き、悩みを抱える人々を支えていきたいと考えるようになりました。
精神科や心療内科を受診するのはとても勇気のいることかもしれません。できれば行きたくないと考えている方もいらっしゃると思います。その気持ちにも寄り添って診療にあたりたいと考えています。幸せな人生を送るためのお手伝いをさせてください。